出張床屋は、一人暮らしのおじいちゃんの安否確認も大事な仕事。

僕は店に来れなくなったお客さんのところに、出張床屋という形でやりに行っています。田舎の人はなかなか遠慮深くて、家まで来てもらうことを凄く気にしているんです。僕はこの仕事は、お世話になったお客さんへの恩返しだと思っているので、時間を使って行っても全然気にしません。ただ、店に来れなくなったお客さんが、髪の毛を切って容姿を整えることで、日常を気持ちよく過ごせたら嬉しいなって感じています。

今年に入り、また一軒の自宅に出張床屋にいく仕事が増えたんですよね。この仕事は決して嬉しい仕事ではないんですよね。なぜかというとお年寄りになり、自分の車の運転免許書を返上しても、電車やNPOバスやタクシーで来れるんですよね。さっきも書きましたが、田舎のお年寄りは本当に遠慮深いんです。ですからこの出張床屋を頼む時は、もう完全に家から外出ができなくなった時に頼みに来るんです。

いつも来店してくれるお年寄りのお客さんには「もし来店が辛くなったら、僕の方から行くから心配しないでね」って行ってあるんです。ですから、こういった出張の電話がかかって来ると、呼んでもらえた嬉しさと「もう店に来店してもらえないんだな」っていう寂しさが、入り混じって来るんですよね。

そして出張床屋に予約の電話が入ると、その時間は店でカットする時間より長く取るんです。それはその家に行き帰りに時間がかかるからなんですよね。片道20分くらいのところもあるんですよ。でもお年寄りが待っていてくれると思うと、また来店してくれた時のように話したりしたいなって、行くのが楽しみになるんです。

行くとだいたい家の土間(今は無くなりましたが、古い家はあるんですよね)があるんです。そこに椅子を置いて、カットをするんです。少し暗ぼったい場所ですが、お互いにそれほど気にしません。髪の毛が切れたらそれで良いんです。でももっと大事なのがコミュニケーションだと思うんです。こういったお年寄りは、一人暮らしで奥さんに先立たれて、毎日が孤独というか話する相手がいないんですよね。ですから僕はお客さんと話すようにしているんです。

つまらない話しでも、一人暮らしのお年寄りには、楽しい時間と感じてもらえたら嬉しんですよね。会話の中で話すことの半分は、僕の店に来店してくれていた時のことや、僕の父親やおじいちゃんのことが多いです。店は僕で三代目なんで、ほとんどのお客さんが三代でカットしてることが多いんです。自然に話も盛り上がります。

そして帰りがけには、おじちゃんが畑で作った野菜を、僕にそっと持たせてくれます。そんなお客さんに見送られる時に、この仕事は、一人暮らしのおじいちゃんの元気な姿を、確認する任務もあるなって感じました。いつまでも出張床屋に行きたい、いつもそんな気持ちでいます。

 この記事の投稿者

乗本和男

浜松市の山奥にある佐久間町というところでフィフティーズな床屋 「ヘアーサロンノリモト」を営んでいます。フィフティーズ・ロカビリーが大好きで自然に囲まれながらロックな毎日を過ごしています。町の人に喜んでもらえる床屋を目指しています! フィフティーズ、ロカビリーが大好きで自然に囲まれながらロックな毎日を過ごしています。町の人に喜んでもらえる床屋を目指しています!
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