伊勢うどんは、旅に疲れた参拝客のために作られた。

僕たち商売人にとって大事なことは、お客さんが何を求めているのか、何が必要なのかお客さんと親しくなり、関係性を作って理解することだと考えているんです。不思議なものでお客さんと心の中から友達のように親しくなると、自然にそれが分かるようになって来るんですよね。そんな不思議な繋がりができるのが、商売をやっている楽しさかもしれないです。

さて先日 母親が地元の親しい友達と三重県に旅行に行ったんです。そして楽しかったらしく、友達との旅行での思い出を話をしてくれたんですよね。まー内容は相変わらず、半分家族の愚痴みたいなものなんだけどね。そんなおばちゃん同士で楽しむ旅行は、家族の愚痴ばかりでもなく他にもあるんです。それはお土産。不思議なもので旅行に行くと、家族に「お土産はいらないからねー」なんて言われているのに、ついつい買って来てしまう。それも自分が買おうとしている以上に、色々と買って来てしまうことが多いんだろうなって思います。

でもそれってしょうがないんだよねー。やっぱり昔の人って自分だけ遊びに行っては、申し訳ないなーって気持ちが強いんだ。だからついつい、いらないと言われているのに買って来てしまう。それもついつい多めに買って来てしまうんだよね。そんな買い物を楽しんで来た母親が、お土産として買って来てくれたのが伊勢の名物「伊勢うどん」なんですよ。僕ね麺類が大好きなんだよね。そして嫁さんも。二人して大阪の娘のところに行くときには、必ず三重県内のサービスエリアで「伊勢うどん」を食べるんです。

伊勢うどんて太めで腰がなく和らいから(嫁さんはこの柔らかさが好きみたい)歯ごたえがないように感じるんだけど、麺が太いから食べ応えは十分ある感じがするよ。でも最近では、うどんもどんどん進化していって、どこのうどん屋も僕たちが普段食べる冷凍うどんさえも、凄く腰がって歯ごたえがあり美味しいんですよね。なのになぜ腰がなく汁がないのか不思議でしょうがなかったです。

「伊勢うどん」が柔らかくて汁がないのかっていうのは「伊勢神宮に参拝するお客さんを待たせないように、作り置きしていたから。忙しい参拝客が直ぐに食べれるように汁なしに。昔は歩きだから疲れた参拝客が、食べても消化がいいように柔らかくした」こんなことが説で残っているんですよね。こんな美味しくてそしてみんなに愛される「伊勢うどん」は、お伊勢に参拝に来るお客さんのことを思い作られた「うどん」なんです。お客さんがどんなものを求めているのか、それを感じて商売にして喜んでもらう。愛情がないとできないことです。「伊勢うどん」は参拝客という、まさに大事な親友のために作られた「うどん」だと思います。

 

 この記事の投稿者

乗本和男

浜松市の山奥にある佐久間町というところでフィフティーズな床屋 「ヘアーサロンノリモト」を営んでいます。フィフティーズ・ロカビリーが大好きで自然に囲まれながらロックな毎日を過ごしています。町の人に喜んでもらえる床屋を目指しています!
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